風俗営業許可における名義貸しのリスクについて解説

様々な事情があり風俗営業許可の申請者になれない場合、他人の名義を借りてキャバクラやスナックなどの経営を始めてしまおうとする方も中にはいらっしゃるかもしれません。

よくあるのは、刑務所から出てきたばかりで人的欠格事由(1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は次に掲げる罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者)に該当してしまうため、自分は申請することが出来ないというケースです。

風俗営業許可申請を行うには、人的要件、場所的要件、構造的・設備的要件に問題がなければよいのですが、破産者や未成年者、集団的・常習的に暴力的不法行為その他違法行為を行うおそれがある者、刑務所から出所したばかりの者、薬物中毒者、心身の故障により業務を適正に行うことが出来ない者などにはその資格がありません。

あと考えられるのは、何か問題が生じた時に自分で責任を負いたくないあまり、実質的経営者が名義上の申請者を責任押し付け要員として用意するケースや、脱税目的のため実質的経営者が偽の経営者を用意して隠れ蓑にしているケースです。

これらもなかなか悪質ですよね……

そこで、他人の名義を使用して営業を行ってしまう方が出てくるわけですが、当然そんなことは許されていません。

風営法11条(名義貸しの禁止)にも「第3条第1項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に営業を営ませてはならない。」と、きちんと書かれています。

もしこの法律に違反してしまった場合どうなってしまうのか?

今回は風俗営業を名義貸しで行うリスクについて解説します。

名義貸しとは

本来は許可や契約の当事者でないにも関わらず、他人から依頼されて自分の名義を貸して契約・申請など行ってしまうこと名義貸しと言います。

その方の名義で他人が何かしらの契約や申請を行ったとしても、その責任はすべて名義上の契約者・申請者(名義を貸してしまった方)が負うことになります。

名義を貸してしまった方が何かしらの責任を負うことになったとしても、名義貸しの事実が発覚すると大きな問題になってしまうため表立って主張することも出来ず、泣き寝入りするしかない状況になることもあるため、名義貸しは非常に危険といえるでしょう。

どこからが名義貸しになるのかの判断は、様々な状況から総合的に判断されることが多いのですが、税務上の申告者が申請者と違う場合は名義貸しと判断されるリスクが高いです。

名義貸しの法的リスク

風俗営業の名義貸しで恐ろしいのはそれだけではありません。

風営法には名義貸しを行った場合の罰則が明文化されており(法第49条)2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれの併科という重い内容になっています。

この罰則は、無許可営業、不正手段による許可の取得、営業の停止等処分違反の場合と同じ罰則であり、風営法違反においてもっとも重い罰則です。

しかも名義貸しの場合、この罰則が適用されるのは名義貸しをした方と名義を借りた方両方に適用されるという点にも注意しなければなりません。

名義を借りていた方は申請者ではないので、無許可営業ということで罰則が適用されるのです。

そして、科されるのは懲役や罰金などの刑事処分だけではありません。

行政処分として、風俗営業許可の取り消しや営業停止を受けることになり、お店を営業することが出来なくなります。

最悪売り上げまで没収されてしまいますので、お店はたちまち再起不能の状態に陥ってしまうことでしょう。

名義貸しを避けるには

風俗営業許可には人的要件がありますが、通常の飲食店営業や深夜酒類提供飲食店営業には人的要件がありません

そのため、刑務所から出てきたばかりの方でも申請・届出者になることが出来ます。

前科があって風俗営業の申請者になることが出来なかった方については、刑の執行後5年を経過すれば通常通り風俗営業の申請者になれるので、それまではお店で接待行為を行わずに飲食店営業や深夜酒類提供飲食店営業の経営者として我慢し、5年経過した段階で風俗営業許可を申請するのが望ましいでしょう。

また、自分で責任を負うのが嫌で別の方を名義人にしたいと考えていらっしゃる方は、残念ながらすんなり諦めるか腹をくくって自分が申請者になるしか方法はありません。

経営者になるのに責任はつきものですので、よく考えてご決断いただければと思います。

まとめ

一見、名義貸しをすると手軽に実質的経営者になることが出来るように思えますが、そのリスクはとても膨大です。

名義貸しを行うことにより、人的欠格事由に該当して風俗営業許可の取得が更に遠のいてしまうことも考えられます。

名義貸しは絶対に行わないようにしましょう。

もし、人的要件に関することや名義貸しに陥らない方法についてご相談されたい場合はいつでもお問い合わせくださいませ。

一緒にベストな解決策を見つけていきましょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。