同人AV(自主制作AV)出演契約書・同意書の作り方

令和4年6月23日より「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」通称AV出演被害防止・救済法が施行されました。世間では「AV新法」という呼び方が一般的かもしれません。

この法律は、AVの出演契約トラブルに対応するため新たに作られた法律です。

問題点も多く、業界団体、女優、男優、監督、撮影スタッフなど、現場では批判や困惑の声も多いこの法律ですが、かといって法を無視して営業を行うわけにはいきません。

この記事では、AVの映像審査倫理機構(モザイクに問題はないか、著作権法に違反していないか、一般人の肖像権を侵害してはいないかなどを総合的にチェックする団体です)に元々審査員として勤務していた行政書士が、AV新法の内容を踏まえたうえで、出演契約書・同意書を作成する際のポイントについて解説していきます。

AV新法上のポイント

AV新法には罰則規定が設けられており、契約書義務違反や説明義務違反があった場合、6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されてしまいます。

違反してしまうことがないよう、AV新法のポイントを下記に整理しました。

・契約締結時には、契約書等を交付し、契約内容について説明する義務があります。

・契約してから1ヶ月は撮影をしてはいけません。撮影時には出演者の安全を確保すること、撮影や嫌な行為は断ることができること、公表前に事前に撮影された映像を確認できること、すべての撮影終了後から4ヶ月は公表してはいけないことを義務付けています。

・撮影時に同意していても、公表から1年間(法の施行後2年間は「2年間」)は、性別・年齢を問わず、無条件に契約を解除できます。

・契約がないのに公表されている場合や、契約の取消・解除をした場合は、販売や配信の停止などを請求することができます。

・性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターで相談・支援を行います。

契約書・同意書を作成する際は、以上のポイントに注意しながら作成する必要があります。

AV出演契約書・同意書を作成するうえでのポイント

契約書締結には、AV新法に違反しないためだけでなく、制作側と女優の意思がきちんと合致していることを書面にして証拠として残しておくことで、トラブルを未然に防ぐという目的があります。

そのためには、契約内容を出来るだけ細かく記載しておく必要があります。

先ほどのAV新法を踏まえたうえで、契約書に具体的に盛り込むべき内容及び注意点をまとめました。

・会社、氏名、連絡先等、特定するために必要な事項

・AV出演契約締結の日時

・出演者が性行為映像制作物(AV)に出演をすること

撮影を予定する日時及び場所

・撮影する性行為などの具体的内容

・性行為の相手方を特定するために必要な事項

・公表の具体的内容及び期間

・公表を行う物を特定するために必要な事項

・報酬の額及び支払い時期

公表する場所・ウェブサイト

出演契約を締結する際は、出演者に対して契約書等を交付、説明しなければならない

1ヶ月の撮影禁止期間があること

契約した内容であっても、その全部または一部を拒絶でき、損害賠償を追わないこと

撮影にあたっては、出演者の健康の保護その他の安全及び衛生並びに、撮影拒絶の任意性が確保されるよう措置を講じなければならないこと

・出演者は公表される映像の確認をすることができること

・4ヶ月の公表禁止期間があること

出演契約が無効になる事由の内容

出演契約が取消しになる事由の内容

出演契約の法定義務違反による解除

出演契約の任意解除等

映像公表の停止または予防請求の内容

プロバイダ責任制限法の特則の内容

取り消し権、解除権については5年間行使することができること

撮影した映像によって出演者が特定される可能性があること

相談に応じる機関の名称及び連絡先

性病検査の実施状況

出演者の母国語への翻訳

以上がAV新法に対応して契約書に盛り込むべき内容となります。
また、状況に応じて

・女優が18歳未満でないことに同意する旨及び年齢の確認方法

・公表前の作品に対する女優の守秘義務

・暴力団等反社会的勢力の排除

・準拠法、合意管轄

・協議事項

などの規定を盛り込んでもよいでしょう。

まとめ

AV事業を行う際には、新法に違反してしまわないよう注意したり、女優と出演契約書・同意書を結ぶ必要がある以外にも、映像送信型性風俗特殊営業届出を事務所を管轄する警察署に提出しなければならなかったり、わいせつ物頒布等罪にあたらないよう適切な処理を施す必要があるなど、営業していくうえで気を付けなければいけないポイントが沢山あります。

知らず知らずのうちに法を犯してしまって逮捕されてしまったなんてことがないように、AVに関連する法令などをきちんと調べたうえで営業を行うことを強くオススメします。