同人AV(自主制作AV)を配信するうえでの注意点

最近はアダルトメーカーが制作するのではなく個人で監督、撮影、編集などを行い、自主制作して配信するタイプのAVが増えてきました。

制作者は、一般の方であったり、他に全く別の事業を行っていらっしゃる方、キャバクラや風俗などのお店に務めている女の子が副業で出演や制作を行っているケースなど、多岐にわたります。

PornhubやYouTubeなどに無料動画を出して、続きの動画は課金登録制のファンティアで公開するなどの方法をとり、一年間で1億8000万円もの収入を得た方もいます。

注意しなければならないのは、自分でAVを制作販売する場合、営業所を管轄する所轄警察署に対して、映像送信型性風俗特殊営業の届出が必要になる可能性があるということです。

FC2やPornhub、ファンティアなどの投稿サイトで販売を行うケースも増えていますが、その場合もURLごとに届出を行う必要があります。

また、AVを作る際には風営法はもちろんのこと著作権、肖像権、モザイクの濃度など、気を付けなければならない点はとても多いです。

今回は映像送信型性風俗特殊営業の届出が必要となるケースや、自主制作AVを制作するうえでの法的リスクについて詳しく解説します。

AV配信で映像送信型性風俗特殊営業の届出が必要となるケースについて

ではまず最初に、映像送信型性風俗特殊営業について記載されている風営法第2条第8項を見てみましょう。

風営法第2条第8項 【この法律において「映像送信型性風俗特殊営業」とは、専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く。)により営むものをいう。】

「電気通信設備を用いて」というのを「ネットを介して」と捉えるとわかりやすいかと思います。

「映像」には映像だけでなく静止映像も含まれます

衣服を脱いだ状態のみならず、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面があるような場合は届出が必要です。

そのため、直接人が出てくるわけではないアダルトアニメやアダルトゲームも届出の対象となります。

「営むもの」とありますので、自分で作成したアダルトサイト上で無償で配信する場合などは届出不要です。

ネット上で動画を配信するだけでなく、電話やネットを介してアダルトビデオの通信販売なども行う場合には無店舗型性風俗特殊営業2号の届出も必要になるので注意しましょう。

たまに、アメリカなど海外のサーバーを利用して配信する場合であれば届出不要と勘違いしていらっしゃる方がいますが、風営法では、映像送信型性風俗特殊営業届出が必要となる対象についてサーバーを日本に置く場合に限定していません。
そのため、日本国内で海外のサーバーを利用する場合であっても日本で営業活動を行うのであれば映像送信型性風俗の届出が必要になります。

また、警察署に届出を行う際には賃貸人の使用承諾書が必要になります。

物件を借りる前に、あらかじめ、所有者さん・管理会社さんに事業の説明をしておかないと、使用承諾書に押印してもらえないなど、後々トラブルになる可能性もありますので注意しましょう。
風俗系ビルの場合だと管理会社さんも慣れているので、あらかじめ使用承諾書を用意してくれるケースもあったりします。

届出には、届出書、構造設備の概要、営業の方法、住民票の写し、賃貸人の使用承諾書、建物謄本(法人の場合は追加で法人謄本、定款)などの書類を用意して、営業所を所轄する警察署に届け出る必要があります。

営業を開始する10日前までには届出しておく必要がありますので、忘れずに所轄警察署に届出書類を提出しましょう。

制作・販売するうえでの注意点

  1. 出演者の年齢確認
    法律で規定されている未成年者の保護に関する法律(児童ポルノ禁止法)に基づき、出演者の年齢を確認する必要があります。出演者が18歳未満の場合は、児童ポルノとして処罰される可能性があるため、年齢確認は非常に重要です。
  2. 配信プラットフォームの規約遵守
    同人AVを配信する際に利用する配信プラットフォームの利用規約には、アダルトコンテンツに関する規定があります。これらの規定に違反すると、アカウントが停止されたり、法的な問題が生じる可能性があります。配信プラットフォームの規約を十分に確認し、遵守するようにしましょう。
  3. プライバシーの保護
    出演者やスタッフのプライバシーを保護するために、配信する映像には顔や身体の特徴を隠したり、修正を施したりする必要があります。また、出演者やスタッフの同意を得たうえで、映像を配信するようにしましょう。
  4. 著作権の尊重
    音楽や画像など、他人の著作物を使用する場合は、著作権法に基づいて許可を得る必要があります。特に、二次創作物の場合は、オリジナル作品の著作権者から許可を得るか、著作権が消滅している作品に限定するなど、十分に注意するようにしましょう。
  5. 一般常識やモラルの遵守
    同人AVを配信する際には、一般常識やモラルに基づいた配慮が必要です。過激な内容や、人権侵害や差別を助長する内容は、社会的に問題視される可能性があるため、十分に慎重になるようにしましょう。

アダルトビデオに出演してもらうため、女優と契約した後に、出演に際してきちんとした同意が得られていなかったなどのトラブルが発生することも少なくないです。

年齢確認を怠ってしまったせいで未成年の女優をビデオに出演させてしまったなんて話も聞いたことがあります。

後からこういった問題が生じてしまわないためにも、女優として出演する方の免許証のコピーを取らせてもらったり、必要な条件はすべてあらかじめ契約書に盛り込んでおくようにしましょう。

そして先述したとおり、著作権、肖像権、モザイク濃度などの問題もクリアしておかなければなりません。

自分ではまったく問題ないと思っているような点であっても、倫理的・法的に問題が生じているケースは多々あります。

私は行政書士になる前、AVの映像審査団体で審査員をしていたのですが、そこで気付いたのは一発合格の作品はほとんどないということです。

特にモザイクが薄すぎたり漏れ(外れ)があったりして弾かれてしまうケースは多く、過去にモザイクが薄すぎることが原因で摘発されてしまったAVの制作会社もありました。

そのため、モザイクさえかかっていればなんでもよいという訳ではないのです。

神社のような場所でそういった撮影を行えば礼拝所不敬罪に問われてしまう危険性もあったりします(ちなみに、10年くらい前に写真家の篠山紀信が墓地でヌード撮影を行ったところ、礼拝所不敬罪で略式起訴されてしまったことがありました)

また、野外で撮影を行う場合は、一般の方が映り込んでしまっていないか、公然わいせつ罪にはあたらないかなどにも配慮する必要があります。

自分にとってあまり馴染みのない法律であるがゆえに、自分でも気が付かないうちにうっかり法を犯してしまうという可能性はじゅうぶん考えられます。

このようなリスクを出来る限り少なくするためにも、制作されたAVに問題がないか審査してくれる映像審査団体に加盟し、映像のチェックをお願いしてみるのも手でしょう。

※審査団体によるかもしれませんが、私が在籍していた団体では加盟にあたって審査がありました。
法人化していることなどの条件があったり、入会申込書及び誓約書の提出、審査担当者との面談、審査料金とは別に月会費などが設定されていたりもします。

AVの審査を受けること自体は販売するにあたって必ず必要なものではなく、あくまで任意ですが、きちんとした審査を受けることでわいせつ分頒布罪などに問われてしまう可能性はグッと下がります。

最後に

自主制作でAVを作ること自体は難しくないですが、その分リスクの管理はきちんと行わなければなりません。

場合によっては警察に摘発・逮捕されてしまう可能性もあります。

後になってから「知らなかった」と言っても通用しないので、営業するにあたってどういったことが必要なのか、どういったことに注意しなければならないのか、営業前にきちんと把握しておくようにしましょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。