改正風営法が施行、全国初の摘発も 〜接待行為の厳罰化と新たな規制項目〜

2025年6月28日改正風営法が施行

2025年6月28日、改正風営法が施行され、早くも同日に、無許可で接待営業を行ったガールズバーが摘発されました。この摘発は改正法施行後、全国で初の事例となります。

本記事では、改正風営法の概要と、今回の摘発事例から見えてくる行政側の運用姿勢、そして今後の営業実務において注意すべきポイントを解説します。


■ 改正風営法の背景と主な改正点

今回の改正は、悪質な接待営業や売掛金の取り立て、スカウト行為を伴う性風俗営業等を取り締まるために行われたものです。主な改正内容は以下の通りです。

  1. 無許可営業に対する罰則の強化
    • 経営者個人に対しては、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。
    • 法人に対する罰金の上限額は、これまでの200万円から3億円に大幅引き上げ。
  2. 不当な営業手法の明示的な禁止・遵守事項の追加
    • 「色恋営業」等、恋愛感情に乗じた飲食等要求の禁止
    • 料金に関する虚偽説明
    • 客が注文していない飲食等の提供禁止
  3. 性風俗店によるスカウトバックの禁止
    • 性風俗がスカウトやホストなどの紹介者から女性を紹介された対価として報酬を支払う「スカウトバック」の禁止
  4. 風俗営業からの不適格者の排除
    • 親会社が許可を取り消された法人を欠格事由に追加
    • 警察による立入調査後に許可証の返納を行い、処分逃れをした者を欠格事由に追加
    • 暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者

■ 全国初の摘発:新宿・歌舞伎町のガールズバー

今回摘発されたのは、東京都新宿区歌舞伎町のガールズバー。風俗営業の許可を受けずに、カウンター越しに女性従業員が接客(いわゆる接待行為)をしていたとして、経営者が現行犯逮捕されました。

警視庁は、事前に立ち入り調査を実施し、違法営業について指導・誓約書の提出もさせていましたが、改善が見られなかったため、摘発に至ったとしています。


■ 改正風営法の運用姿勢:警察の厳格化と実効性強化

従来から「ガールズバー業態」は風俗営業1号(キャバクラ等)との境界線が問題視されてきましたが、今回の摘発により、形態がバーであっても実態として接待営業が行われていれば厳しく処分されるという警察の明確な姿勢が示されたといえます。

特に、

  • 女性が男性客の隣に座らなくとも
  • カウンター越しであっても
  • 会話内容や接触の頻度などにより「接待」に該当すると判断される可能性があります。

■ 今後の営業者・事業者が注意すべきポイント

今回の改正を踏まえ、風俗営業に関わる事業者は以下の点に留意すべきです。

  • 許可の必要性を再確認する
    • 営業形態が「バー」や「ラウンジ」とされていても、実質的な接待行為がある場合は、風俗営業の許可(1号許可)が必要になります。
  • 従業員の教育と指導を徹底する
    • 「接待」に該当するような行為(過度な会話、視覚的サービス、過剰なサービス等)を行わせないよう、事前の指導とマニュアル整備が不可欠です。
  • スカウトとの関係の見直し
    • 今回の改正風営法では、スカウトバックの禁止は性風俗関連特殊営業に限定された規制であり、接待飲食店(キャバクラ・ラウンジ・ガールズバー等)には直接適用されるものではありません。
    • しかしながら、スカウトを通じた従業員の採用が、結果として無許可営業や違法接客に繋がるケースもあり、警察側もスカウトとの関係性について注視している傾向があります。

■ 改正風営法が示す、警察の今後の対応方針

今回の摘発事例からも明らかなように、警察は改正風営法の施行を契機に、従来よりも迅速かつ厳格な法執行の姿勢を鮮明にしています。

歌舞伎町のガールズバーに対しては、既に立入調査が行われており、その際に無許可での接待営業が確認されたことから、警察は口頭での指導にとどまらず、誓約書の提出や法内容の説明まで行っていたにもかかわらず、営業者が是正措置を講じなかった点を重く見て、摘発に踏み切ったとされています。

従来であれば、こうしたケースにおいては、一定の猶予期間を設ける、あるいは再指導を挟むといった対応も見られましたが、今回は法施行初日というタイミングも相まって、迅速な現行犯逮捕という強い措置が取られました。

これは、法改正の実効性を高め、他の事業者に対しても強い警鐘を鳴らすという意味合いを含んでいるものと考えられます。

また、警察内部でも、今回の法改正に伴い、接待行為や違法営業の判断基準を再確認するための職員向け研修・マニュアルの再整備が進められているとされ、今後は判断のばらつきが減り、運用がより均質化・形式化されていく可能性があります。

なかでも、ガールズバーやカウンター接客形式のラウンジなど、従来「風俗営業に該当しない」とされていたグレーゾーン業態についても、実態重視の運用が強化されつつある点には、特に注意が必要です。

形式上は接待をしていないとしても、実際の接客内容や店舗の構造、客と従業員の関係性、演出効果などを総合的に評価したうえで「接待行為あり」と判断されれば、無許可営業として直ちに摘発対象となり得ます

このように、法の運用がより厳格化・迅速化されている現状においては、営業者としても形式や看板にとらわれず、営業実態を客観的かつ法的観点から再点検することが求められています。

■ おわりに:制度の趣旨を踏まえた営業体制の整備を

改正風営法は、健全な営業を行う店舗と悪質な業者を明確に分けることを目的としています。今回の改正で「知らなかった」「前は問題なかった」が通用しない時代に入ったといえるでしょう。

今後、摘発事例が続けば、より一層の法令順守体制の構築が求められます。行政書士としても、今後の運用状況を注視しつつ、事業者の皆様に正確な情報と実務支援を行っていく所存です。

お問い合わせはこちら:
TEL 03-5992-6205

風営法改正に伴う営業方法の変更など、適切な運営をサポートいたします。