【風営法解説】風俗営業で立入検査を受けた場合の流れ― 無承認の構造変更・わいせつ行為が指摘されたらどうなるのか ―

風俗営業を行っていると、警察による立入検査(風営法第37条)が入ることがあります。
この立入検査は、営業所の構造・設備・照度・接待の実態などが、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる風営法)や営業許可の内容に適合しているかを確認する目的で行われます。
本記事では、立入検査の結果、無承認の構造変更やわいせつ行為等の違反が疑われた場合に、一般的にどのような流れになるのかを、法令と実務に基づいて整理します。
1.警察による立入検査と指摘事項の確認
警察官は、風営法第37条に基づき、営業所への立入検査を行う権限を有しています。
風営法第37条は、公安委員会や警察職員が必要と認めるときに、営業所その他の関係場所に立ち入り、帳簿や設備の状況、従業員の勤務実態などを検査できる旨を定めています。
この立入検査の目的は、営業が適法に行われているかどうかを確認するためであり、刑事捜査とは区別されます。
ただし、検査の結果、重大な違反の疑いがある場合には、行政処分や刑事手続に発展する可能性もあります。
検査では、店内構造・設備・照度・接待内容などが確認され、許可内容と異なる点が見つかった場合は、「違反の疑い」として指摘されることがあります。
とくに次のような行為は、違反として扱われるおそれがあります。
- 公安委員会の承認を得ずに構造や設備を変更(例:個室化、暗室化、間仕切りの追加など)
- 客に対してわいせつな行為・過度な接待を行う
- 許可の種類と異なる営業を行っている
違反の内容や程度によっては、その場で営業許可証を一時的に預かるなどの対応が取られるケースもありますが、これは法令上明記された手続ではなく、実務上の運用により異なります。
■ 無承認の構造変更があった場合
風俗営業の営業所については、営業許可を受けた当初の構造・設備を維持する義務があります。
間仕切りの設置、照明の変更、個室化などを行う場合は、事前に「構造変更承認申請」が必要です。
無承認で変更を行っていた場合、立入検査で指摘を受けると、まずは口頭または文書での是正指導が行われ、その後、必要に応じて行政処分が検討されます。
処分の内容は、違反の程度や営業者の対応姿勢にもよりますが、「営業停止処分」や「許可取消処分」となるケースも見られます。
■わいせつ行為が確認された場合
いわゆる接待行為の範囲を超えて、性的な接触やわいせつな行為が行われていた場合、風営法違反(第2条・第3条等)として厳しく扱われます。
この場合、警察は立入検査に続いて従業員や関係者への聴取を行い、証拠が固まれば刑事事件として送致される可能性もあります。
営業者自身が関与していない場合でも、店舗管理者としての監督責任が問われることが多く、行政処分(営業停止・許可取消)と刑事責任(罰金刑など)が並行して進む場合もあります。
2.警察による調査報告と公安委員会での審査
違反の疑いがある場合、警察は調査報告書を作成し、都道府県公安委員会に報告します。
その後、公安委員会が報告内容をもとに審査を行い、行政処分を行うかどうかを判断します。
この過程で、追加の事情聴取や改善状況の確認などが行われることもあります。
営業者側としては、事実関係の整理や改善策の提示を行い、処分内容の軽減を図る余地がある場合もあります。
3.処分前の「弁明」または「聴聞」
行政処分を行う前には、公安委員会から「弁明通知書」または「聴聞通知書」が届きます。
警察の立ち入り検査があってからだいたい数ヶ月~半年ほどかかって届くケースが多いようです。
この通知書には、違反内容・処分の予定内容・期日等が記載されています。
この段階で弁護士などの専門家に依頼することで意見書を作成し、
・違反の事実関係に誤りがある場合の主張
・改善措置を講じた旨の説明
・従業員教育や再発防止策の提示
などを公安委員会に対して行うことで、営業停止日数の短縮や警告処分への軽減が図られることもあります。
弁護士などの専門職が意見書を作成する以上は、店舗の監督責任があるため、そのことも考慮されて処分軽減の効果があるといえます。
4.公安委員会による行政処分
営業停止処分・許可取消処分の場合は、公安委員会の審査を経て正式な処分が決定すると、「行政処分通知書」が交付されます。
処分の種類としては、風営法第25条、26条に基づき、以下のようなものがあります。
| 処分の種類 | 内容 |
|---|---|
| 指示処分 | 違反行為の是正を命じる比較的軽い処分 |
| 営業停止処分 | 一定期間、営業の停止を命じる処分 |
| 許可取消処分 | 許可自体を取り消す最も重い処分 |
営業停止の日数や処分の重さは、違反の内容・程度・改善の有無・再犯性などを考慮して公安委員会が判断します。
具体的な日数や基準は地域・事案によって異なるため、「営業停止○日」といった明確な基準は一概には言えません。
5.処分後の影響と再許可制限
許可取消し処分を受けた場合、風営法上の欠格事由により、原則として5年間は新たな風俗営業許可を取得できないとされています(風営法第4条関係)。
また、令和7年11月28日に施行される改正風営法により、欠格事由が拡充され、取消し処分前に自主的に許可証を返納した者についても欠格事由にかかるため注意が必要です。
【改正風営法第4条第1 項第8号】
八 次のいずれかに掲げる期間内に第十条第一項第一号の規定による許可証の返納をした者(風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で当該返納の日から起算して五年を経過しないもの
イ 第二十六条第一項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間
ロ 第三十七条第二項の規定による風俗営業の営業所への立入りが行われた日から聴聞決定予定日(当該立入りの結果に基づき第二十六条第一項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞を行うか否かの決定をすることが見込まれる日として国家公安委員会規則で定めるところにより公安委員会が当該立入りを受けた者に当該立入りが行われた日から十日以内に特定の日を通知した場合における当該特定の日をいう。)までの間
上記に該当する場合は5年間、風俗営業者となることは出来ません。
また、営業停止処分を受けた場合は、停止期間中は営業を行うことができません。
営業を再開する際には、必要に応じて構造の是正確認や書類提出を求められることがあります。
6.再発防止のために行うべきこと
処分後、同様の指摘を受けないためには、次のような対策を講じることが重要です。
- 店舗構造・照度・接待内容を定期的に点検
- 構造変更前には、必ず公安委員会への承認申請を行う
- 従業員に対する法令遵守教育の実施
- 行政書士や風営法専門家への定期的な相談
特に、「少し仕切りをつけるだけ」や「カーテンだから問題ない」といった軽微な変更でも、実際には承認が必要なケースが多いため注意が必要です。
所轄によっても判断が分かれるケースもあります。
まとめ
風俗営業における立入検査は、警察による監督の一環として実施されるものであり、
その結果、無承認の構造変更やわいせつ行為等の違反が疑われる場合、公安委員会による行政処分につながる可能性があります。
ただし、処分の流れや日数、対応方法は地域や事案内容によって大きく異なります。
指摘を受けた場合には、早期に状況を整理し、改善措置を講じたうえで、専門家に相談することが最も確実な対応策です。
お問い合わせはこちら:
TEL 03-5992-6205
安全で適正な営業をサポートいたします!

