インフルエンサーと風営法:SNSを活用した風俗営業の新しい形態について

はじめに:SNSが変える風俗営業の形態


近年、SNSを活用したマーケティングは風俗業界にも広がりを見せています。特に無店舗型性風俗(デリバリーヘルス)や映像送信型性風俗(ライブチャットや映像配信サービス)においては、インフルエンサーやキャストがSNSを通じて直接顧客と接触し、営業活動を行うケースが増加しています。こうしたSNSを通じた新しい営業形態が風営法とどのように関わるか、法的リスクや許可の取得について解説します。

SNSを活用した風俗営業の現状

無店舗型性風俗や映像送信型性風俗は、風営法の規制対象です。特に最近では、myfans、Twitter(X)、Instagram、TikTokなどのSNSを利用し、個人で活動を行うケースが増えています。SNS上での営業活動が非常に効果的である一方で、法的なリスクが潜んでいる点も見逃せません。

2.1 無店舗型性風俗(デリバリーヘルス)

「無店舗型性風俗特殊営業第1号営業(デリバリーヘルス)」とは、風営法によると「人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」を言います。もう少し嚙み砕いて言うと、デリヘルは、店舗を持たず、顧客の自宅や指定された場所でサービスを提供する業態です。SNS上での広告やキャストのプロモーションが行われていますが、無店舗型性風俗の営業を行うためには、所轄の警察署へ無店舗型性風俗特殊営業届出を行う必要があります。届出を行わずに営業活動を行ってしまうと、無届出営業として罰則を受ける可能性があります。店舗や事務所などに所属せずに、個人で営業を行う場合も必要となりますので注意しましょう。

2.2 映像送信型性風俗(ライブチャット、動画配信)

映像送信型性風俗特殊営業とは「専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達することにより営むもの」を言います。インターネットを通じて性的な映像を見せるサービスを行うのが映像送信型性風俗です。近年のライブチャットや動画配信サービスの発展により、インフルエンサーやキャストが自ら映像を配信して収益を得るケースも増えています。これも風営法の届出の対象であり、たとえファンティア(Fantia)、マイファンズ(myfans)などのプラットフォーム業者自体が映像送信型性風俗の届出を出していたとしても、実際に映像配信事業を行う営業者個人が適切な届出を行う必要があります。映像送信型性風俗の営業を行うためには所轄の警察署へ映像送信型性風俗特殊営業届出を行わなければなりません。また、無修正の映像や画像を配信することは出来ませんので、配信前に必ずモザイク処理を行うようにしましょう。

3.届出の重要性と法的リスク管理

無店舗型や映像送信型の性風俗営業をSNSを通じて行う場合でも、風営法の要件に該当する場合は適切な届出を行うことが必要です。届出を行わないまま営業を行った場合、罰金や営業停止などの行政処分を受けるリスクがあります。さらに、SNS上での違法営業が発覚すると、信用失墜や刑事処分のリスクも伴います。最悪の場合は懲役刑となるリスクもあるため、届出は必ず行いましょう。

4.無店舗型性風俗・映像送信型性風俗営業の届出要件

無店舗型性風俗営業は、風営法に基づき届出を行う必要があります。届出を行うためには、営業者の住民票や事務所の所在地が分かる周辺地図、事務所図面、性風俗としての利用について建物所有者が承諾していることが確認出来る使用承諾書などの添付が必要です。また届出様式には営業形態などの詳細な情報を記載することが求められます。映像送信型性風俗営業の場合も、風営法に基づいた届出が必要です。用意する書類については無店舗型性風俗の場合とほとんど変わりませんが、映像の送信が性風俗に該当するかどうかの判断が重要で、あらかじめ届出が必要な営業形態かを明確にしておく必要があります。そのため、事前に行政書士や所轄警察署に確認を取っておくことが望ましいでしょう。また、映像配信プラットフォームの利用規約にも適合することが重要です。

5.行政書士としてのサポートの役割

SNSを利用して風俗営業を行おうとする事業者や個人に対して、行政書士ができるサポートは多岐にわたります。届出手続きの代行だけでなく、適法な営業活動を行うためのアドバイスや契約書作成、リスク管理のためのコンサルティングを行うことが可能です。

まとめ:法的リスクを理解し、安全なSNS営業を

SNSを活用した風俗営業は、非常に効果的な集客手段となり得ますが、風営法に違反しないよう適切な届出を行う必要があるのと同時に、法的リスク管理が必要不可欠です。違法な営業形態によるリスクを最小限に抑えるためにも、無店舗型性風俗・映像送信型性風俗に該当するのはどういった場合なのか、性風俗営業を行うためにはどういった手続きを行う必要があるのか、営業を行ううえでどういったリスクが潜んでいるのかをよく考える必要があります。